毎年冬が近づくと「今年はどんな型のインフルエンザが流行りそうだ」とか「どこでどのようなタイプのインフルエンザウイルスが検出された」といったニュースを聞くことがあります。また流行を予測して作られたインフルエンザワクチンが「今年は当たった」「はずれた」というような話題も耳にします。
いったいインフルエンザにはどのような型があって、それぞれどんな特徴があるのでしょうか。今回はインフルエンザのタイプとそれぞれが引き起こす病状についてご紹介したいと思います。
3種類のインフルエンザウイルス
数あるインフルエンザウイルスの中で、人間に感染するウイルスは大きく分けて3種類あり、それぞれA型、B型、C型と呼ばれています。 一口にインフルエンザとは言っても、
ウイルスの型によってずいぶん症状や経過が異なります。
【A型インフルエンザ】
A型インフルエンザウイルスは、他と比べ症状が激しい型です。
「インフルエンザ」と聞いて皆さんが想像するような、強烈な症状が出やすい型だと考えられています。通常一度インフルエンザにかかると、回復の過程でそのウィルスに対する免疫が体内に作られますが、A型は全世界的なインフルエンザの流行として話題になることが多く、ウイルスの形をどんどん変えて進化し続けるため、今までに獲得した免疫が機能しにくくなり、ワクチンの予測も立てにくいインフルエンザウイルスです。
・38℃を超える高熱
・肺炎を含む、深刻な呼吸器系の合併症
・ものを飲み込むのが困難なほどの、のどの痛み
・関節痛、筋肉痛
・脳炎、脳症の合併症を引き起こすことがある
【B型インフルエンザ】
B型インフルエンザウイルスは、以前は数年単位で定期的に流行しておりましたが、近年は毎年流行しています。A型インフルエンザのように、大きな流行を起こすことはあまりないと考えられています。
・お腹の風邪の症状に近く、下痢やお腹の痛みを訴える人が多い
・人と人の間でしか感染しない
【C型インフルエンザ】
C型インフルエンザは、いったん免疫を獲得すると、終生その免疫が持続すると考えられています。再びかかったとしてもインフルエンザだとは気づかず、ふつうの風邪と思ってしまうかもしれません。
・ほとんどの大人が免疫を持っているため感染しにくい
・かかるのは4歳以下の幼児が多い
・感染してもインフルエンザとしてはかなり軽症で済むことが多い
・症状は鼻水くらい。ほかの症状はあらわれないことが多い
A型インフルエンザウイルスの猛威
A型インフルエンザウイルスは、感染したものの体内でどんどん進化するので、新型のウイルスが次々にできてしまいます。
そのため、流行前に作られたワクチンが対象にしていたウイルスと、構造が大幅に異なる可能性があります。つまり、一度A型インフルエンザのあるウイルスに対してワクチンができても、ウイルスが他の個体や、ときには別種の動物から発生したウイルスと結合し、より強い病原性を持つ新しいウイルスになってしまう可能性があるということです。
毎年、厚生労働省指導の元、そのシーズンに流行が予測されるウイルスに合わせて、インフルエンザワクチンが製造されています。予測技術は高まってきているものの、上記記載の通りウイルスはどんどん進化し、製造されたワクチンが対象にしていたウイルスとは別のウイルスに進化してしまうこともあるため、「今年は当たった」「外れた」のような話が出てくるのです。
特に近年話題になったもので、世界的に流行し、致死率の高さなどで非常に恐れられた「鳥インフルエンザ」「豚インフルエンザ」なども、A型インフルエンザウイルスに含まれます。
2002年医師免許取得、2012年医学博士号(甲)取得。
日本内科学会認定内科医、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、インフェクションコントロールドクター、日本感染症学会感染症専門医、日本化学療法学会化学療法認定医・指導医、日本結核病学会抗酸菌認定医・指導医、日本アレルギー学会専門医、肺がんCT検診認定医。